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S・R-センゴク・ロワイヤル- Part4

1 :筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :2005/06/11(土) 14:21:04
時は弘治三年(1557年)、日本中が新たなる時代を求めて、
戦に戦を繰り返した時代・戦国時代である。
しかし、後奈良天皇崩御の直後、正親町天皇が践祚した直後であった。
戦国の名だたる武将達100名は、ある島に集められ、天皇から地獄のゲームの開始を告げられた。

「この島で殺し合いをせよ」

人を殺すのが日常ともいえるこの時代の武将達ですら、このゲームは異色と感じるが、
有無を言わさずゲームに参加させられた武将たちは、困惑しながらも様々に行動を始める。
殺す者、殺される者。
騙す者、騙される者。
知己を探す者、獲物を探す者。
愛する者、憎む者。
信じる者、諦める者。

前スレ
http://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/warhis/1112174682/l50

ほのぼの板 【ひーちゃんと】S・R休憩所【愉快な仲間達】
http://human5.2ch.net/test/read.cgi/honobono/1117896676/l50

ログ保管ページ
http://kannakamui.hp.infoseek.co.jp/

2 :筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :2005/06/11(土) 14:21:42
・このスレは、実在した戦国武将達を動かしていくリレー型の小説スレです。 もちろん登場する人物・物語は事実を基にして作られたフィクションです。
・こちらは本編のみで進行させる作品専用のスレです。感想及び雑談などは雑談・感想スレの方でお願いします。
・武器は原作と同じ様な設定とし、その使用法がわかる解説書つきとします。 また、全員この島の地図と名簿を所持しているものとします。
・外交関係の認識は1555年あたりとします。(武将も大体そのあたりの者を選定) 武将の年齢は・・・あまり考えないで下さい。
・必要時以外はsage進行で。荒らし、煽り、叩きは徹底スルーでお願いします。
・リレー小説なので、人物設定や物語に矛盾や混乱が生じないよう、細心の注意と配慮が必要となります。
・あまりに突飛過ぎる話(例えば、スイッチ一つで全員爆死など)はおやめください。一人で暴走しないで下さい。
・位置関係や時間設定も重要です。矛盾が生じないよう過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・どうしても使って欲しくないキャラ(そのキャラの続編を執筆中などの場合)は、一言雑談・感想スレにて断っておくのをお勧めします。
・武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
・基本はリレーですが、それぞれのキャラには主に担当している書き手がついている場合があります。もしそういったキャラを使う場合、
混乱を避けるために、これも雑談・感想スレで一言断りを入れるのをお勧めします。
・作中の武将の状況、一覧などは、だいたい50レスに一度くらいの割合で気付いた人がやりましょう。

3 :筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :2005/06/11(土) 14:22:15
01赤尾清綱×  26岡部元信×  51佐久間信盛× 76林秀貞×
02赤穴盛清×  27織田信長○  52佐々成政×  77久武親直×
03秋山信友×  28織田信行×  53宍戸隆家×  78平手政秀×
04明智光秀×  29飯富昌景○  54柴田勝家×  79北条氏照×
05安居景健×  30小山田信茂× 55下間頼照×  80北条氏政×
06浅井長政○  31海北綱親×  56下間頼廉×  81北条氏康×
07浅井久政×  32柿崎景家×  57上条政繁○  82北条綱成×
08朝倉義景×  33桂元澄×   58鈴木重秀○  83細川藤孝○
09朝比奈泰朝× 34金森長近×  59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋×  35蒲生賢秀×  60滝川一益×  85本多正信×
11足利義輝○  36河尻秀隆×  61武田信廉×  86前田利家○
12甘粕景持×  37北条高広×  62武田信繁×  87真柄直隆×
13尼子晴久×  38吉川元春×  63武田晴信×  88松平元康×
14尼子誠久×  39吉良親貞○  64竹中重治×  89松田憲秀×
15荒木村重×  40久能宗能×  65長曽我部元親○90松永久秀×
16井伊直親×  41熊谷信直×  66土橋景鏡×  91三雲成持×
17池田恒興×  42顕如×    67鳥居元忠×  92三好長慶○
18石川数正×  43高坂昌信×  68内藤昌豊×  93三好政勝×
19磯野員昌×  44香宗我部親泰○69長尾景虎○  94村上義清×
20今川氏真×  45後藤賢豊×  70長尾政景×  95毛利隆元×
21今川義元×  46小早川隆景× 71長坂長閑×  96毛利元就×
22岩成友通×  47斎藤道三×  72丹羽長秀×  97森可成×
23鵜殿長照×  48斎藤朝信×  73羽柴秀吉×  98山中幸盛×
24遠藤直経×  49斎藤義龍×  74蜂須賀正勝× 99六角義賢×
25大熊朝秀×  50酒井忠次×  75馬場信房×  100和田惟政×

×印:死亡確認者 87名
○印:生存確認者 13名

4 :筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :2005/06/11(土) 14:22:50
   |    A   .|    B   .|   C  |    D   .|   E   .|   F   .|  G   |    H   .|   I    .|
______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|
   |
 1 |              _,,,,,   ,,,,,,,    _,,,,,-'''"" ̄'Z,,,,_,,          北
   |  /'''''"''''"\,,._.,,-''"""  "''"   ""''"" 林 林X    i,          .↑      /'''''"''''"\
______.|  i,崖            家家家    林 林    i        西←┼→東   i     崖,,ゝ
   |  'i,,    林 林   林        林 林 林    'I,,,,,        .↓    /    崖/
 2 |   ''I,,,   林林林  林  畑畑畑           "''I          南   ,,/     崖i
   |    'I,   林    林    畑畑畑            \,,,   ,,,,,   /       ヽ,,
______.|    /             畑畑畑畑              \/,  \/         /
   |   /'         V            森森森森森                家家  "''ヽ,,,
 3 |   i    廃 廃             森森森森森森森森        田田田  家家家   "'i,
   |   |廃 廃     荒 荒     林林林林林林林林林森森     U 田田          i"
______.|   i川川川川   荒荒       林林林林林林林林林林林林              ,,,,,,_/  

5 :筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :2005/06/11(土) 14:23:21
   |   ヽ    川川川川川川   林林林林林林林林林林林林林         浜浜,,/
 4 |    i 草草草草     川湖 森森森森森森森森森森森森         浜浜/'
   |    '-, 草森森森草草       森森高高高高高高高高森森     浜,/''"
______.|      'i, 草草森森森森草草   森山森山森山森山森山森山    浜,/'
   |      ,i'  草草草草草草      山山森山山森山山森山山森    'i,
 5 |     /  家     沼     T   山山山山山山山山山      "'i,,
   |    'i   家              山山山山山山山山山山山        \
   |   / ,,,,,,,,,,,,,,,               山山山山山高山山山山山    W     "'ヽz
      \,,,/    \,,,/\,,,,/ヽ,,,,,,,,,,,/ヽ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,ノヽ_,,,,.,ノ\/\,,,,,,,ノ\,,._.,,-''"""ヽ,,,,,,r

廃:廃墟 荒:荒地 川:河川 湖:湖(透明度が高く飲むことができる) T〜X:それぞれのスタート位置
森:森 草:草原 沼:沼(にごっているため飲むことはできない) 林:林 崖:崖 山:山 高:高地
家:民家(簡単な医療道具や食料有り) 浜:砂浜 田:水田 畑:畑

6 :筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :2005/06/11(土) 14:23:53
正親町天皇・・・今回の狂気ともいえる余興の主催者。最後まで生き残った者に、天下を約束する。実は剣術の天才?

06番浅井長政・・・数奇な運命に見舞われ、ともに行動していた昌信と死に別れ、晴信を殺し、鬼ノドカに別れられる。義輝と出会ったことで、自らの余興に対する思想を明らかにするも、ノドカとも死別した今、一体どうなってしまうのか。
07番浅井久政・・・終始戦いとは無縁なこの島に似つかわない和み系オッチャン。出会った猫(輝政と命名)と穏やかな時間を過ごしていたが、不運にも自爆してその生涯を終えた・・・、
と思われたが、なんと猫と同化してしまう。肉体は死に絶えたが精神は未だ健在。番外編の主人公である。
11番足利義輝・・・九字の破邪刀で大悪を斬ることを決意。幸盛の忘れ形見となった「エペ」を片手に、仲間である重秀、昌景らとの合流を目指す。
27番織田信長・・・自分の方が天皇より優れていることを証明するため、殺し合いに積極的に参加する孤高のジェノサイダー。重秀との互角の戦いによって何かが変わった・・・?現在は主催者側と思われるフロイスに案内され、帝の居場所に近づこうとしている。
29番飯富昌景・・・昌信、ノドカの幼馴染。昌信を始め、相次ぐ同家の者の死を乗り越え、この余興から生還する決意をする。重秀と共にトラックを乗っ取り、現在は景虎、重秀、親泰と行動を共にする。子供の親泰からも慕われる心優しき人。
39番吉良親貞・・・不治の病を抱え、その治療を約束した主催者側に協力する。ロヨラに吹き込まれ、兄・元親、弟・親泰も含め、参加者全てを狙う。
44番香曽我部親泰・・・道三の洗脳・催眠術に掛かって、操り人形になっていた子供。現在は段々と自我を取り戻しつつあり、故郷へと生還する願いが生まれ始める。

7 :筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :2005/06/11(土) 14:24:25
57番上条政繁・・・ジョースター家の一人。景虎との合流を目的としているが、未だに利家との妙な縁が途切れないでいる。彼が景虎と無事に出会える日は来るのだろうか・・・?
58番鈴木重秀・・・超人的な身体能力と動体視力を持つ気ままな自由人。数々の修羅場を共に乗り越えてきた仲間達と共にこの余興から脱する決意をする。
65番長曽我部元親・・・弱き者に牙を向く者を嫌悪する、姫若子と呼ばれた男。正義感の強い男だったが、弟達の命を盾にとった主催者の罠にかかり、参加者の殺戮を決意する。
69番長尾景虎・・・上杉謙信の名で知られる名将。苦悩する重秀の心や、同家の者の死を知った昌景の憂い心を見抜いたりと、徐々に大物の風格を漂わせ始めた味方の信頼厚き実力者。
83番細川藤孝・・・仕草が美しい風流を知る剣の達人。天皇の真意を求めようとするが、その最中、我が主君義輝にちょっとした悪戯心を披露する為、彼を捜し歩いている。
86番前田利家・・・相棒に死により、心に迷いが生じていたが、見事迷いから目覚めた槍の又左。相棒の致命傷の切り口を見た直後、主君の仕業と判断し、主君を討つことに目的を変更する。
92番三好長慶・・・久秀に踊らされるふりをし、実は久秀を踊らせて殺害した策士。破滅思考から脱し、覇者の様相を携え、藤孝、義輝を付け狙う。

イグナティウス=ロヨラ・・・この企画の実質的な主催者。完璧主義で、口も上手く、参加者らを殺戮に駆り立てる。
フランシスコ=ザビエル・・・この企画の裏方で、ロヨラと同格。様々な事務をこなすが、実は激情である。
ルイス=フロイス・・・ロヨラ、ザビエルの2トップからは少し距離をおいている。信長の協力を得るために島の中へ。
ルイス=アルメイダ・・・フロイスの忠実な部下。フロイスが見つからないようにカメラを操作しているが・・・。

8 :筆頭家老 ◆IVgdXngJC6 :2005/06/11(土) 14:38:25
個人
【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾17発+mag1)』『天国・小烏丸』】左眼失明。4-D森
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(破砕)』『梓弓(4隻)』『グロック17C(残弾16発)』】3-E森地点(爆発したトラックの元へ移動予定)
【65番 長曽我部元親『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾3発)』『青龍偃月刀』】3-Fで少し休息して3-Eへ向う予定
【83番 細川藤孝 『備前長船』】3-E近辺(なんとなく利家&上条を探すが、他に面白いものがあればそれに向かう )
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】
(行方は不明、目的・義輝と藤孝暗殺に変わり無しだが、誰に対しても殺意と警戒十分)
【39番 吉良親貞 『日本号』『モトローラ トランシーバ T5900』『イサカM37フェザーライト(残弾2発)』】
4-C湖地点で待機。『AK74(弾切れ)』はその場に放置

パーティ
【44番 香宗我部親泰 『長曾禰虎徹』】
【29番 飯富昌景 『オーク・Wアックス』『フルーレ』】
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ(残弾4発)』『SBライフル(残弾14発)』】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『十手』】全員場所不明記の為不明。食料配布地点3-Eを目指します。


【27番 織田信長 『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』】
&【∞番 ルイス・フロイス 『ベレッタM92FC(残弾15+1)』】両者3-E森 目的:本部への潜入 (食糧入手)

【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発・暴発の可能性あり)』『鉄槍』『Mk2破片式手榴弾(一個)』】
&【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』『H&K MP3(残弾13発)』】3-D (食糧入手)

【残り13+1人】

9 :覚ゆ悟り1/18:2005/06/11(土) 22:37:04
義輝「・・・いい加減隠れていないで出て来たらどうだ?余が死ぬまで姿を現さぬつもりか?」
トラックが爆発する数分前に話は戻るが、何者かが己を尾行している気配を感じた義輝は振り向きそう呟いた。
いや、気配・・・というより足音と言った方がいいのかもしれない。
つい数分前から、義輝が歩くたびに後ろで『パキパキ』や『バキッ』という小枝を踏む音がしっかりついてくるのだ。
そして己が止まると、その音もピタリと止まる。
当然先ほどから何回も義輝は振り返っている。が、一応隠れる術は心得ているのか、足音の主の姿は見えない。
もっとも尾行する時に足音を立てながら歩いている時点で隠れる術も何も無いのだが・・・。
なんとなく、いや十中八九この足音の主が推測できた義輝は、少し声を荒げてその人間の名を呼んだ。
義輝「・・・余は少々気が荒立っておる。いかにお前でもあまり余をからかうと承知せんぞ?・・・藤孝」
さすがに名前が呼ばれると・・・というより、まるで名前が呼ばれるまで待っていたかのように
義輝を尾けていたその足音の主『細川藤孝』は木の影から姿を現した。
藤孝「ほう、これはこれは。上様ではありませんか。どうやらお元気そうで」
まるで今たまたま会ったかのような藤孝の台詞に、さすがに義輝も呆れた。
いや、そんなことよりおよそ将軍に向かって使うべき行動や言葉ではない。
が、さすがに付き合いが長いせいか、あるいは見えぬ何らかの縁か、義輝もそのことは追求しない。
義輝「あまり余を見くびるな」
藤孝「ほう。しかし意外とその正体に気づくのが遅かったですな。上様ともあろうお方が」
義輝「む・・・まったくああ言えばこう言う・・・まあ、それはよかろう。
   で、なぜわざわざ余を尾けていた?何か異端の用が無ければ、お前もそんな事はしまい」
確かに、ただ合流しようとするだけなら声をかければいいだけだし、攻撃するなら、わざと『ばれる尾行』などは決してできない。
それは藤孝であれども例外ではない。おかしなマネをして義輝を怒らせてしまっては元も子もない。
とするなら、何かそれなりの用があったのでは?というのが義輝の推測であった。だが・・・。
藤孝「・・・ふむ」
義輝「む・・・なぜ考える?」

10 :覚ゆ悟り2/18:2005/06/11(土) 22:38:25
『何か用か』そんな言葉をかけられて、用があるはずの藤孝は真剣に考え込む。
さすがにこれは義輝も想定外だった。
無論藤孝には義輝に用がある。『落胤』と明かす、という用が。
だがこの状況でいきなりそんなことを言っても『突飛な冗談だ』とか『くだらん事を言うな』と言われるだけだろう。
この状況では後者が有力だが、つまり、まず義輝は信じない。そして話はそこで終わる。
下手をすれば、間に遺恨や欺瞞が残る。
そこで藤孝は『どうしたものか』と考える。そしてその結果、彼はある展開を思いつく。
藤孝「・・・よし」
義輝「・・・何を言っている?余は急いでいる。大した用でもなければ後に回すがよい」
当然藤孝の考えがわかるはずもない義輝は、そう言い残しその場を立ち去ろうとする。が、それを藤孝が止めた。
藤孝「心せわしきお方かな・・・しばし待たれよ」
義輝「む・・・なんだ?」
藤孝「・・・一手、手合わせを所望致す」
義輝「・・・手合わせ?」
当然、こんな言葉は義輝の想定外中の想定外である。
義輝、藤孝、実力の差はあれどこの二人は互いに剣の玄人である。そして持っているのは真剣。
それでやるとするなら間違いなくどちらか、あるいはどちらも死ぬだろう。
というより、はっきり言って手合わせをする必要などどこにもない。
だが、義輝の剣技においてのプライドは『手合わせ』という言葉を聞いて、わずかばかり心が沸き立った。
藤孝とは同門・・・つまり同じく塚原卜伝の『香取神道流(新当流)』を学んだ門徒でもある。
にも関わらず、今まで手合わせをした事は一度もない。一度たりとも、ただの稽古すらないのである。
無論、過去に『手合わせをしてみないか?』と義輝が言ったこともある。
全て『いやです』の類の言葉であっさり返された。
そんな藤孝が自分から『手合わせしてみよう』と言い出したのである。
心、とりわけ義輝の中にもある『上昇志向』『向上心』が沸き立つのも無理は無い。
だが、その義輝の『藤孝と手合わせをしてみたい』と言った思いは、他の要因によってかき消された。

11 :覚ゆ悟り3/18:2005/06/11(土) 22:39:13
義輝「手合わせ・・・か、ふむ。いや、それは出来ぬ。互いに持っているのは真剣・・・。
   それになにより、そんなことをする必要はどこにもないのではないか?
   余もお前も、油断さえせねばこの島で命を落とすような人間ではない。戻れば付き合ってやろう」
少し後ろ髪を惹かれるような物言いをして、義輝は藤孝の想定外の望みを断った。だが、藤孝はさらに言葉を返す。
藤孝「感覚は狂いますが、刀を返して棟で寸止めでもよいし、その辺の木の枝でもいい。
   およそ実力とは無縁の勝負になりそうですが、まあ、互いの体調程度はうかがえる。それに・・・」
義輝「・・・それに?」
藤孝「先ほど『必要のない勝負』と仰いましたが、この島では『必要のなさ』すら戦いの理由になる。
   必要の無い勝負がこれまでどれだけ繰り広げられたか、そしてそれで何人・・・いや何十人命を落としたことか?
   それを把握するため、とまではいけないが、その戦いがどんなものか・・・それを知るのもいいでしょう」
『剣豪将軍』と言えどもやはり人間である。わずかな感情の揺れを信用している相手に隠す事は出来ない。
いや、むしろ『剣豪』と呼ばれるほど剣技を鍛えた人間だからこそ、過敏に反応してしまったのではないだろうか。
あるいは卜伝から『一之太刀(ひとつのたち)』という香取神道流秘伝を授けられた己が、剣技でまさか藤孝に遅れはとらぬという慢心だったのか。
とにかくどれにせよ、わずかに義輝が見せた『スキ』を藤孝は見逃さなかった。
この後藤孝にとって手合わせに持ち込むことは非常に容易であると言えた。
決して上手に出ず、だが決して己の威厳を損なわず、相手の心のスキとも呼べるようなものを最大限に引き出し利用する。
無論これは古今無双の教養者である細川藤孝の、言葉の文法、アクセント、声色、威厳その他諸々の彼にしか出来ない究極至高の技術であり
我々現代人に彼の真似が出来ようはずが無いのだが。
そして事はどうなったかというと・・・。
義輝「・・・まあ、構うまい」
少々粗暴な言い方だが、つまり義輝は違和感を感じながらもまんまと藤孝の術中に嵌ってしまったわけである。
藤孝「左様でございますか。では、参りましょう」
そう言いながら、藤孝はそのあたりの小枝を拾い、軽く手中で振り回す。

12 :覚ゆ悟り4/18:2005/06/11(土) 22:40:09
藤孝「・・・・・・・・・・・・おっと、そういえば、少々失念していた事が」
藤孝はまた手中の小枝を回転させ、思い出したかのようにそう呟く。
義輝「何のことだ?言ってみよ」
藤孝「手合わせとは言ってもさほど儀式ばる必要はなし。軽く身体を慣らす程度か、互いの程度を測る程度」
義輝「そのような事か?」
藤孝「いや、『その程度』と認識し、かつ、この手合わせにおいて申し上げたい事が一つ。
   ・・・この手合わせは」
そこまで呟いたとき、藤孝は不意に回転させていた手中の小枝を最低限の動作で義輝の顔に投げつける。
義輝「ぬ!?」
まさか唐突にそんなものが来るとは思わず、一瞬不意を突かれた義輝がすぐに正面に目を向けると
藤孝はすでに眼前にいた。
直後、剣閃が音を立てず己の頭上ギリギリをかすめていく。
義輝が我に返り刀に手をかけた瞬間には、すでに藤孝は必殺の間合いから遠く飛びのいていた。
藤孝「すこし気が抜けているようなので、元から言いましょう。この手合わせは」

藤孝「こういうのもアリでいくつもりですので、つまるところ・・・覚悟なされよ」
義輝「藤孝・・・貴様!!」

義輝「・・・貴様ともあろう者がこの島で狂ったか!このたわけがッ!」
藤孝「・・・さて?それはどうだか」
すぐに義輝は刀を抜く。ヒビが入っていることも忘れてはいないが、もはやそんな事を言ってはいられない。
本来なら銃を抜くべき状況だが、銃を構えようとする動作より
慣れた刀を抜く動作の方がスキが少ないと瞬時に判断したからだろう。
あるいは今だ所持している銃を撃ったことが無いのも、そう考える要因となったのかもしれない。
とにかく、義輝はいつの間にか剣を構えている藤孝に向かい、また剣を構える。
極限の緊張感、一歩も動けない威圧感が、その時から空間に広がっていった。

13 :覚ゆ悟り5/18:2005/06/11(土) 22:41:30
その一部始終のやり取りを、近くの木陰に隠れ解剖するように『観察』していた三好長慶は笑いを浮かべ呟いた。
長慶「ふ、義輝よ・・・互いに家臣には苦労するものだな」
長慶(しかし相変わらず細川め、解せぬ奴よ・・・ここで義輝を殺して奴に何の意味がある?
   いや、殺すなら今の剣閃で頸を飛ばせばよい・・・と、なれば・・・?)
たまたま居合わせただけ、というわけでもないが、この状況は長慶にとっては千載一遇のチャンスでもある。
だがだからと言ってただ浮かれて状況を見守るほど三好長慶という男は愚鈍ではない。
長慶(今矢を放つか・・・?さすればどちらかは殺せよう。
   だが、この長慶の目的、策はあくまでこの二人、共々の抹殺。
   さすればもう一方はわしに気づく・・・後、わしは生きられまい。
   やはり予定外の動作はわしに利をもたらすとは思えぬ・・・)
生来の慎重性からそう考えた長慶は『ここは見(ケン)でいく』と判断した。
長慶(今・・・このわしに気がつけるほど義輝も藤孝も余裕があるとは思えん・・・。
   しかし、この二人が揃うのは良しだが、この状況では我が策は万全というわけではない・・・。
   今は奴らの一挙一動何一つとして見逃さぬ・・・勝機は必ず我に訪れる!その時までただ『観』るのだ・・・)
先ほど長慶が食糧配布場所で手に入れた、水の入ったペットボトル・・・。当然その中にはすでに毒を入れている。
彼はその『毒入りペットボトル』をどのように使うか、木陰でまたもシミュレートしながら両者の対峙を観察した。

長慶の推測は当たっていた。
まず、まさかの裏切りで激昂している義輝は、木陰で完全に気配を殺した長慶に気がつくはずなどない。
そして藤孝も・・・いや、義輝、藤孝、長慶、この三人の中で今一番他に割く余裕が無いのは他でもない藤孝である。
義輝は藤孝の剣技の程を知らないが、藤孝は道場で義輝の稽古を観察していた分、しっかりと承知している。
藤孝と義輝が『まとも』に戦えば、まず間違いなく藤孝が負ける。
つまるところ、剣豪将軍と相対する威圧、プレッシャーは並々ならぬものがある、ということだろう。
藤孝(さて、と・・・ここからが重要だ。もはや一足ですら間違いは許されぬ・・・)
刀を握る藤孝の手が汗ばむ。

14 :覚ゆ悟り6/18:2005/06/11(土) 22:42:34
少し刀を握る手が汗ばむ。
藤孝が、なぜそこまでして『興味と悪戯心』のためにこのような行動を取るのか?と余人は疑問に思うだろう。
だが逆に言えば、それこそが我々凡人には決して到達する事の無い『天才の原動力』と言えるのではないだろうか。
顕如の前に散った本田正信の言葉を借りるなら、興味こそが藤孝の原動力であると共に原点となるのだろう。
誰しもが経験するように『人の反応』は想像し得ないからこそ受ける感覚は楽しいし、また痛む。
そして興味が沸く。
だからこそ人は人と接しあうのである。機械的な反応を繰り返されても人は何の感動も感じることは無い。
むしろ怒りを覚えるだろう。
今の藤孝は、ただその予測のつかない反応への興味のために、暴挙とも言える試みを起こした。
なぜ『落胤』が養父から明かされたのか、そのわけも知らずに。

義輝「・・・なぜだ?」
当然の事ながら今相対している義輝もまた別個の分野の天才でもある。
一分も経ってはいないが、相対している間に少し冷静になったのか、種々の疑問が彼にも浮かんでいた。
藤孝「なぜ・・・とは?」
義輝「・・・なぜ余を裏切る?余に何か落ち度があったとでも言うのか?」
以前重秀に『能無し』呼ばわりされた事も少しは要因なのか、まず己に非があるのか、と義輝は問う。
だが、その疑問は藤孝に大きな失望を与えた。
藤孝(さて・・・問われたいのはそんなことではないが・・・)
なおも藤孝は思案する。己の狙い通りに事を進ませる方法を。
藤孝(ならばもう一度・・・)
義輝の『なぜ』という疑問に答えず、藤孝は持っていた剣を上に構え足を直し、いわゆる『上段の構え』を取る。
義輝(む・・・『上段の構え』・・・これがこやつの基本形か・・・)
藤孝の剣術においての実力が未だ明確に見えてこないこと、そしてなにより己の刀にヒビが入っていることから
義輝の気概は藤孝を『現在の自分と同等、あるいは以上の実力を持つ相手』と認識した。
その後、義輝は姿勢をただし、剣を下に構える、いわゆる『下段の構え』を取る。

15 :覚ゆ悟り7/18:2005/06/11(土) 22:43:31
長慶(ほう・・・さて、剣術は得手というわけではないが、この場合有利なのは義輝か・・・)
いまだ木陰から機会を窺っていた長慶は、この対峙を『義輝有利』と判断した。
そもそも剣術において実力が上なのは義輝である。まっとうに戦えば十中八九義輝が藤孝を斬るだろう。
だが、それはあくまで『まっとう』に戦えば、の話だ。少なくとも虚実の戦い、心理戦においては藤孝が上である。
だが義輝もそのことは承知しているだろうし、生半可な陽動や揺さぶりでは義輝は恐らく揺るがない。
そういった要因から判断し、長慶は『義輝有利』と判断した。
長慶(気勢の甘い、だが勢いのある方が先に動くか・・・)
いまだどちらも剣の届く間合いから離れている。が、もう二歩ほど踏み込めばまさに『一足一刀、必殺の間合い』へと届くだろう。

その間合いに近づいたのは義輝からであった。下段の構えのまま、じりじりとすり足でわずかに前に進んでいく。
長慶(下段の構えで必殺の間合いに近づくか・・・なるほど・・・足を狙うつもりか?)
長慶がそう思うのも当然であった。全ての動作において、足動は決して欠かせない。
現代で言えば、野球選手はバットを振る際に手の力だけではなく足を重心にして体全体の力を引き出し、そして打つ。
野球と剣は同じ理論ではないが、なににせよ足の動きは体全体の力を引き出すために決して欠かせないものである。
その足を狙うというのは決して悪い戦術ではない。むしろ、戦局を磐石にするための定石とも言える。
それに足ではなくても、そのまま勢いを持ち突き出せば腰に刺さり、重傷を負わせる事も可能だ。
ただし、それはあくまで『相手の攻撃に自分が当たらなければ』という状況での話だ。
義輝が剣を振ろうと動作を示せば、わずかに遅れるものの藤孝も剣を降り降ろすだろう。
たとえ足の一本奪おうとも、上段から飛んでくる剣撃で頭をかち割られてしまっては何の意味も無い。
長慶(なれば義輝、どう動くか・・・・む!)
先に動いていた義輝に気を取られていたが、藤孝も少しずつ近づいている事に長慶も気づく。
互いにすり足でじわりじわりと近づき、必殺の間合いまであと一歩となった時・・・。

まず藤孝が勢い良く剣を振り下ろした。

16 :覚ゆ悟り8/18:2005/06/11(土) 22:44:21
長慶(ぬ!焦ったか!)
いまだ両者は間合いに入らない。それでは剣が届こうと相手に致命傷など与えられない。
かわされて仕切り直しとなるのが関の山だ。だが・・・。
義輝「しぇや!!」
義輝は一歩も後ろに退かず、下段に構えていた剣をそのまま上に振り上げる。
直後激しい金属音が響き、藤孝の剣は義輝の剣の圧力に負け、また腕ごと上まで戻された。
長慶(ぬう、応じ返し!!下段はそのための布石だったか!)
実際、『上段からの剣閃を下段からはじき返す返し技』を狙える人間などそういるものではない。
しかも、藤孝も剣術の玄人である。それだけで義輝がどれだけの実力者か推測できる。
先ほど長慶が考えた『足を奪うという定石』それを藤孝にも思い込ませるために、義輝は下段を構えたのだ。
そして今、義輝の目的どおり事は成ったのだが・・・。
義輝「ぐっ!」
義輝は下段から剣を振り上げたまま、なぜか怯んだ声を挙げる。直後、すぐに藤孝は後ろに飛びのいた。
藤孝「あまりこの藤孝を甘く見てもらっては困る。その程度、予測はついていた」
長慶(むう!なぜ細川が先に動く!?あのまま義輝が剣を振り下ろしていれば・・・ぬ!?)
必殺の間合いから両者が離れた後、義輝が片手で顔を押さえているのを見た長慶は藤孝が打った仕掛けに気づいた。
長慶(・・・石を蹴り上げたと!?)
長慶の推測は当たっていた。
義輝が剣で剣を弾き返そうとすれば、間違いなく藤孝の剣に目がいく。
ならば視界外の足で石を蹴り上げ顔に当てれば、攻撃のさなかにある義輝が怯むのも無理はない。
もっとも一度不意打ちを受けている義輝が怯むのはほんの一瞬だ。姿勢の問題もあるし通常では避ける事は不可能。
だからこそ、その怯んだ瞬間に後ろに飛ぶため、藤孝は必殺の間合いから一歩離れた場所で剣撃を繰り出したのだ。
・・・下段、返し技、義輝の思惑とその返しの返し、状況からここまで思いつくことはさほどの読みではない。
だが、一歩間違えばそれこそ即死か致命傷という重圧の中、こんな行動を取れる者など通常いるだろうか?
よほどの度胸、そして絶対なる自分への自信がなければこんなマネなど出来るはずが無い。

17 :覚ゆ悟り9/18:2005/06/11(土) 22:45:14
長慶(なんという胆!なんという自信!あやつ、まことに人間なのか!?)
長慶は思わず驚嘆の声を上げそうになる。が、その直後、長慶にまたも驚きが訪れた。
長慶(義輝・・・あの剣が折れたか!)
耐久力の限界だった義輝の破邪刀は、擦り上げ返しの勢いに耐えられず、ヒビの部分から割れていた。

藤孝(・・・上様の剣が割れたか。どうやら今までの事で少々無理をさせすぎだったようだな・・・)
今の一撃で藤孝の『太刀』も腰が伸びた(反りが大きくなった)が、割れてしまうほど大きな問題ではない。
そしてもう一度、藤孝は腰の伸びた太刀を上段に構える。
藤孝(こうなるとは思わなかったが・・・さて・・・)
そう藤孝が思った時・・・。
義輝「・・・帝に与したか?」
ふと、義輝が一言呟く。
この時、義輝の脳裏に一人の男が過ぎる。
LSDによって己の意志を無くし、己と対峙した井伊直親が。
思い起こしたのは、今の瞬間がその時の状況にあまりにも似ているからかも知れない。
だが義輝には、藤孝が彼や妖刀の男の様に狂ってしまった、つまり『大悪』だとはとても考えられなかった。
己にとっての股肱の臣であるという事もあるのかもしれないが・・・。
藤孝「まさか。我が命、そして意志は己だけのもの」
義輝「左様か」
藤孝「・・・」
義輝「お前の行動、今だ余には不可解・・・だが、余に知れぬ意志は込められているのだろう。
   ・・・だが余に刃を向けた以上、覚悟は出来ているのだろうな?」
藤孝「愚問。そして『覚悟』というものは決して軽いものではない事も承知」
義輝「ならば是非も無し・・・いや、是こそあり・・・。
   余も見せよう。余の生涯に於いて究極無比の『覚悟』を」

18 :覚ゆ悟り10/18:2005/06/11(土) 22:46:09
藤孝の言葉をそう返すと、義輝が割れた破邪刀を、今度は『中段の構え』に構えなおした。
藤孝(割れ刀で中段だと・・・?)
たいてい動作の端々から相手の心のベクトルがわかる藤孝も、さすがに戸惑った。
割れた刀ではあるが、今の構えは彼等の師『塚原卜伝』を彷彿とさせるのである。
いや、あるいはこの気概こそ藤孝も名前しか知らない義輝の師匠、上泉秀綱の教えなのかも知れない。
とにかく、最初に対峙していた時の義輝の気概をさらに超える、時を止めたような『氣』という物を
今藤孝は身に感じていた。
一里先の針の落ちるさえ聞き分けられる状態とはまさにこの瞬間の事を言うのだろう。
今、義輝が構えているものは割れた刀にすぎない。
だが、藤孝は何か今までに無い一撃、己が耐えられぬ一撃が来る事を予感していた。
つまり、直感的に『次の一撃で己は死ぬ』と藤孝は感じたのである。
そして必殺の間合いにまた互いがじりじりと近づいていった時、不意に義輝は静かな声でまた藤孝に問う。
義輝「今・・・また問おう。なぜだ?」
藤孝「なぜ・・・とは?」
先ほどと同じ言葉が繰り返される。だが、次の言葉は先ほどとは異なったものだった。
義輝「生み出される全ての疑問・・・其に答えよ」
藤孝の望んでいた問い・・・つまり『最初になぜ義輝に手合わせを所望し、わざわざ怒らせるようなことをしたか』
その答えがそれであった。
『落胤』を信じさせるためにはどうするのか?それなりの流れ、とりわけ『嘘のつけない空気』というものが必要だ。
ではどうすればよいのか?そこで藤孝はこう考えた。
股肱の臣である己が叛逆すれば義輝は激怒しよう。だが、己が欲するのは『激情』ではない。
それすらも超えた、人間が持ちうる最高峰の感情『覚悟』が支配する空間なのだ、と。
つまり、その流れを生み出すために藤孝は義輝に斬りかかった。そして、挑発し、誘導した。
そして今彼の筋書き通りそれは成った。
異質の天才細川藤孝の覚悟は、また異質の天才足利義輝が持つ覚悟と混ざり合い、究極の空間を生み出した。

19 :覚ゆ悟り11/18:2005/06/11(土) 22:47:17
今この場で偽りや小細工は出来ない。いや、先ほどまで義輝が抱いていた怒りも存在しない。
あるのは互いの覚悟だけだ。
この空間、生半可な者では呼吸すら忘れてしまうだろう。
だが、その空間は同時に藤孝にもある種の悟りを引き出すことになる。
藤孝「・・・なるほど。さて、どう答えたものか?」
義輝「・・・」
藤孝「・・・」
しばらく極度の緊張感を保ったまま、言葉はそこで途切れる。
・・・そして不意に口を開いたのは、やはり問いかけられた藤孝だった。
藤孝「世の中には、知ってはいけない事がある。誰とて例外ではない」
義輝「・・・そうか」
藤孝は今ようやくわかった。なぜ養父は『己の血』について知ってはいけないと言ったのか、と。
秘密を知れば明かしたくなるのが人間である。ましてや興味を原動力にする藤孝であればそれはなお当然の事となる。
だが、突飛な秘密を明かすためには信じ込ませるための舞台が必要だ。
この場合はこの手合わせの域を超えた試合ならぬ『死合』だろう。この島でならそれは可能となる。
そして、全てのお膳立てを整えた今、まさに今、藤孝の命は風前の灯となる。
藤孝(父はなぜ話したのか?おそらくこの藤孝を試したのだ。そこまで見抜けるかどうか。だがこの藤孝は見抜けなかった)
命が助かるような状況ならともかく、確実に死ぬような状況ではさすがに藤孝も言うまい。
だが仮に普通の世界で藤孝がその事を漏らしたのなら?間違いなく藤孝に秘密を話した父もまず生きてはいまい。
おそらく藤孝の血については、細川家の最大のタブーの一つなのだろうから。
つまり、父は己の命を賭けてまで藤孝を試した・・・いや、つまり己の命を藤孝に託した事となるのだろう。
藤孝(見事だ、父よ)
養父の本心はわからない。だが、養父と共に生きてきた藤孝はそう判断を下した。
藤孝(こうなれば是非も無し・・・いや、是こそあり!覚悟を越えて見せよう!)
言うなれば、人智を超えた才によって撒いた火種。
その火種を刈り取るため、今藤孝は己の血に込められた秘密を決して明かさぬ覚悟を決めた。

20 :覚ゆ悟り12/18:2005/06/11(土) 22:48:12
長慶(先ほど細川が飛びのいた距離は、必殺の間合いから五歩程度・・・そして今は四歩と言ったところか・・・。
   過程から言えば、先ほどと違いまだ隠し種を持っているはずの細川が有利か・・・だが・・・)
そう、だが今の義輝から発せられる気のようなものは並大抵ではない。
『義輝は何か企んでいる』と長慶も感じざるを得なかった。
長慶(だが生半可・・・いや、どれほどの陽動でも細川は揺るぐまい・・・先ほどとは立場が一転したが、さて・・・?)
義輝と藤孝は、ともに中段の構えのまますり足でじりじりと近寄っていく。
そして必殺の間合いまで後三歩ほどとなった時、藤孝は唐突に口を開いた。
藤孝「・・・父は偉大であった」
義輝「・・・其は晴員か、元常か?」
藤孝「のみならず全て」
義輝「左様か」
そこで会話は途切れた。また互いにじわりじわりと近づいていく。
長慶(必殺の間合いまで残り二歩・・・そして一歩・・・)
その時だった。

突如、周囲の世界すべてを破壊するほどの激しい爆音が響き渡った。
長慶「ぬう!?」
その音に思わず長慶も声を出す。
だが長慶が義輝と藤孝から目を離した瞬間、その爆音を契機にして義輝は動いた。
必殺の間合いまであと二歩。割れ刀ではその距離はさらに広まる。
だが、義輝はそんな常識を無視するかのような超速で突っ込んでいった。
長慶「なんと!?」
そして爆音に気を取られた長慶がまた二人を見た時、そこでは既に勝負はついていた。
義輝は、先ほど藤孝がいた場所に割れ刀を突きつけている。だが、そこに藤孝はいなかった。
藤孝は義輝の側面に、また距離を離した場所に位置していたのだ。
つまり、藤孝は超速の義輝の剣閃をかわしていたのである。

21 :覚ゆ悟り13/18:2005/06/11(土) 22:49:43
義輝「・・・見事。『一之太刀』をかわすとは・・・お前の腕、これほどまでとは思いもしなかった」
藤孝「見事なのは上様の方。今の一撃の心技体、気概、そのすべてがこの藤孝の予想を完全に上回っていた。
   惜しむらくは、刀が割れなければ。そして後一歩踏み込んでいれば・・・」
義輝「・・・あの音に動かされた。あの音が偶然というのなら、それは天がお前に味方した証・・・。
   それに今の一撃で『一之太刀』の秘は明かされた」
長慶にはその会話は聞こえなかったが、その次の義輝の言葉はしっかりと耳に届いた。
義輝「・・・もはや、これまで」
この言葉が契機となって、その場に充満していた鬼気は緩やかに流れ出し、覚悟の境地も終消えた。
それはつまり、この二人の『手合わせ』という名の『死合』が終幕した事を意味していた。
その後義輝は何も言わず、持っていた『九字の破邪刀』を後ろに引く。藤孝もまた『太刀』を収めた。
藤孝「では、見事に隠れていた部外者には退場していただきましょう」
藤孝はそう言うと、『九字の破邪刀』の割れた先端部分を拾い・・・。

思いっきり真正面に投げ飛ばした。
先端はそのまま回転しながら飛び、長慶が隠れている木に勢い良く突き刺さった。
長慶「む!」
長慶(・・・ほう。気づかれていたか・・・いや、先ほど声を出したときに気づいたと考える方が自然か)
長慶とて凡人ではない。先ほどの『覚悟の境地』が超人的なものである事も気づいていた。
その空間ならば、爆音の際に己が漏らしたわずかな声でさえ聞き分けても不思議は無いと思ったのである。
長慶(さて、気づかれてはもはや我が策も用いる事は出来ぬ。ここは一時撤退と行こうか・・・)
そう考えた長慶はとっさに身を翻し、また森の中へ消えていった。

藤孝「ほう、長慶は逃げたようですな。なかなか見事な逃げっぷり」
藤孝はそう言うが、これは別に長慶を卑下しているわけではない。むしろその逆である。
藤孝「あやつめ、おそらく化けましたぞ。これはそう簡単に制す事は出来ませぬな。

22 :覚ゆ悟り14/18:2005/06/11(土) 22:50:33
   ところで上様、いつまでそうしているつもりで?」
と、藤孝は軽い口調で、満足と無念入り混じる複雑極まりない表情で空を仰いでいた義輝に声をかける。
義輝「これほどまでに充実した、清清しい気分は、この島に来てから初めてかも知れぬ。
   過程はともかく最後の一太刀、あれには憤りも憎しみも何も無かった。
   そう、あの覚悟こそが幾多の先人が追い求めた『無我』なのかも知れぬ」
藤孝「ほう」
義輝「・・・だが、余はそのために刀を失った。己の力とも言うべき破邪の力を・・・」
そう言いながら、義輝は簡潔に語りだす。今までの事・・・井伊直親の事や、妖刀の事を。
藤孝「なるほど、妖刀。この藤孝もこの島で見たことはあるが、先ほどの割れ刀がそれと対を成す刀と?」
義輝「おそらく」
その言葉を受け、ふむ、と藤孝は少し考える。が、またすぐ簡単な口調で突飛な事を言い出した。
藤孝「ならばまたくっつくのでは?」
義輝「な、なんだと?」
藤孝「先ほどの話の流れでは、妖刀はまだこの世に存在しているはず。
   なれば対を成すものも存在していなければならぬのが、世の常とも言える。
   これは理屈ではなく、世の中の流れ・・・というか、決まりのようなもの。そういうものです」
義輝「・・・いかにとくとくと説こうが、割れたものは戻るまい・・・死んでしまった者と同様に。
   無くしてしまったものを返らせる事など、余にもお前にも出来る事ではない。つまり・・・」
対を成すものがある、という藤孝の弁が世の道理ならば、死者が蘇らないのは常識過ぎる世の道理だ。
義輝の言う事は至極真っ当な事だった。
藤孝「無理だと?」
義輝「ああ、そうだ。無理であろう・・・違うか?」
藤孝「いや、その通り。無理でございます。死者を蘇らせるなどという事は。
   しかし、既に今までの我々のこの島での行動は、常識を超えた『無理』な事ばかりやってきたのでは?」
義輝「・・・それはそうだが・・・」

23 :覚ゆ悟り15/18:2005/06/11(土) 22:51:22
藤孝「そもそも帝にしても、我々百人をこの島まで運んだのも『無理』があったことでしょう」
義輝「・・・うむ・・・」
藤孝「だが奴らはその無理を超えた。ならば我々も道理や無理を超え、奴等の度肝を抜いてやりませんか?」
義輝「他人事と思いおって・・・」
苦笑しながら義輝は言う。が、藤孝は『心外な』と言った様な表情をし、また饒舌に語りだした。
藤孝「他人事ではありませんよ。貴方が死ねば、この藤孝とてまた困る。
   いいですか?貴方が生きて将軍としているからこそ、この藤孝もまた己の研鑽に全力を注ぐ事が出来る。
   言い換えれば、この藤孝が先ほど上様の太刀をかわせたのも、また上様のお陰とも言える」
その言葉を受け、ハハハという義輝の笑いが響いた。その後、また落ち着いた表情で義輝が問う。
義輝「三度目の正直だ。なぜか、と今又問おう」
藤孝「ほう。なぜ、とは?」
義輝「茶化すな。余の頸を取るつもりであれば初太刀でも今でも悠々と取れるであろう。
   何でも良い。言え。お主の命を賭けた覚悟、その理由を。たとえどのような理由であっても、咎めはせぬ」
藤孝「左様か。では申しましょう。私が命を賭け、そして上様にも命を賭けさせてまで伝えたかった理由を」
義輝「・・・」
藤孝「・・・」
しばし藤孝は考え込み、沈黙が辺りに訪れる。が、藤孝は唐突に口を開いた。
藤孝「上様は甘すぎる」
義輝「ぬ?」
藤孝「そうではありませんか?今、私が生きていることが何よりの証。
   主に刃を向けるどころか散々挑発した者など当然。
   なぜそれをなさらぬのか?」
義輝「意志の問題だ・・・お前の意志は『人殺しの愉悦』や『天下への野心』というものではない。
   帝に与せぬものをなぜわざわざ殺すことがある?
   この島でその様な者をあやめる事、それこそやってはならぬ愚行であろう」

24 :覚ゆ悟り16/18:2005/06/11(土) 22:52:10
藤孝「なるほど。まあこの藤孝も言及はしません。ただし、心には留めておいてもらいたい。
   人の話は三割信用し、七割は疑う、という事を」
義輝「む・・・」
藤孝「人は嘘をつく。だが嘘をつくのは決しておかしな事でも、悪い事でもない。
   問題は、その嘘が信じるべき嘘か、信じてはいけない嘘か・・・そこにあるのです」
義輝「信じてはいけない嘘・・・それは人を欺き、陥れ、亡き者にしてしまおうとする嘘か」
藤孝「左様」
義輝「・・・」
藤孝「無論、これまでも上様を助けたものはおりましょう。しかし誰であれ、心が揺らぐ事はある。
   そして、そのものを疑う事、あるいは斬らねばならぬ事は苦になることも必至。
   だが、それをせねばならぬのが上に立つものの宿命」
義輝「・・・それはわかっている。だが」
『だが』という言葉を残した義輝は、そこで一度言葉を途切れさせ、大きくため息をつく。
そしてその後すぐに藤孝の顔を見据え、しっかりと言い放った。
義輝「・・・人を信頼してこそ、得られる信頼もある。余は救いがある人間ならば、一人でも多く助けたいのだ」
藤孝「それも良いでしょう。それも一つの真理。真理は一つというわけではない」
そう言い残すと、藤孝は腰の伸びた太刀をその場に投げ捨て、またどこかへ歩き出そうとした。
義輝「共には来ぬのか?」
藤孝「長慶が気になります。先ほどの音も確かに気になる。
   だが、我ら二人でのこのこ歩いていたら長慶に餌を与えるようなもの」
義輝「ふむ・・・」
藤孝「上様はお仲間と合流するおつもりで?」
義輝「うむ・・・お前もか?」
藤孝「・・・そうですな。先ほどの爆音も気になりますが、まあ、おおかた誰ぞの武器でありましょう」
含みを残したようなはっきりしない言葉で、藤孝は肯定する。

25 :覚ゆ悟り17/18:2005/06/11(土) 22:53:15
藤孝「では、私はこの辺で。あまり一場所に長居するのも好きではないので」
義輝「うむ」
藤孝「・・・ああ、それと」
少し歩いた藤孝が、思い出したように義輝に顔を向け、神妙な面持ちで言った。
藤孝「一之太刀は一撃必殺、究極至高の奥義。外れる事などまずありえない。
   裏を返せば、この藤孝がかわせたという事は、あれは一之太刀ではない」
義輝「・・・何が言いたいのだ?」
藤孝「割れ刀の撃が外れるは道理過ぎる道理。あまり気にやむ必要はない」
それだけ言うと、また藤孝は森の中へ消えていった。

義輝「甘すぎる、か・・・」
藤孝が去った後も、しばらく義輝はその場で佇んでいた。
将軍としての気位は持っていたつもりだったが、あるいはそんな甘さはあったのかもしれない。
確かに『しめし』という点では、ここは藤孝を斬らねばならかったのかもしれない。
だが、それは通常の場合だ。この様に狂ってしまった島の中で、なぜそんなことをしなければならないのだろう。
力を持つものを、何より、帝に与したわけでも、天下を狙っているわけでもない人間を斬るということを。
義輝「いいや、藤孝よ。お前は自分しか見ていない。皆が皆お前の様な人間ばかりではないのだ。
   人は時に迷う。それを、利と力、そして情によって先導していかねばならぬのが・・・将軍なのだ」
人に対する疑いは伝染する。そしてそれはそのうち、皆を疑心暗鬼に陥れるだろう。
その不協和音は、帝に向かう者達にとってあってはならない事だ。
義輝「お前が正しいか、余が正しいか。あるいはどちらも正しいのか、はたまたどちらも間違っているのか。
   それはわからん・・・だが、余は初志を貫徹するのみ」
初志をまた口にした義輝は、木に刺さった九字の破邪刀の割れ端を取る。

26 :覚ゆ悟り18/18:2005/06/11(土) 22:54:13
そしてそれを己が刺さらないように持つと、刀に語りかけるように呟いた。
義輝「砕けたのも、まだまだ余が未熟ゆえ。許せ。だが、我が心は決して折れぬ」
そして、また義輝は切れ端を持ったまま、先ほど爆音がした方向へと向かう。
その音は、彼にとって信頼足りえる者達が起こした『トラックの爆発』であることを、まだ彼は知らない。
彼がその道を進むのも、あるいは割れた破邪刀が示した道だったのかもしれない。
そして歩く道筋の途中で義輝は藤孝を思い出す。
義輝「・・・父は偉大であった、か・・・あるいはあ奴、己の血の事を漠然ながらも知っているのか・・・。
   であればこそ、あ奴は余にあのような態度を取るのやも知れぬな」
そう呟くと、義輝はすこし呆れたような、しかし濁りの無い笑いを残し、また歩き出した。

足利義輝、細川藤孝、三好長慶。
死するが当然のこの『手合わせ』で、この三人は傷一つ負わなかった。
それを成したのは、義輝の威厳か、藤孝の誘導か、卜伝の教えか、長慶の存在か。
はたまた、互いに知ってはいれども明かす事は無かった奇妙な兄弟の縁がそうさせたのか。
あるいは、いまだ成すべき事が残るこの三人の早すぎる死を、超越的な何かが許さなかったのか。
その答えもまた、覚悟の境地の先にあるものかもしれない。

【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(破砕)』『梓弓(4隻)』『グロック17C(残弾16発)』】
(3-E森地点から爆発したトラックの元へ移動予定)

【83番 細川藤孝 『備前長船』】
(3-E近辺、なんとなく利家&上条を探すが、他に面白いものがあればそれに向かう)

【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】
(行方は不明、目的・義輝と藤孝暗殺に変わり無しだが、誰に対しても殺意と警戒十分)

27 :Invincible 1/6:2005/06/11(土) 22:55:08
本部の暗い一室で、相変わらずオルガンティノは考え事をしていた。
オルガンティノ(以下オル):
(奴をこの部屋に引きずり込むこと・・・それ自体は容易い。
 僕の計画通りなら、僕が彼に恨みを抱いているように、彼も僕に恨みを抱いているはずだ。
 だから彼は僕を見た途端、喜びと復讐心に満ちた目でこの部屋に入ってくることだろう。
 だがその後の計画は・・・ん?)
ギイィと重い扉が開く音がした時、彼は考える事をやめた。
オル「珍しい事もあるものですね。大した間も無く、この部屋に二人も訪れるとは・・・何用ですか?」
オルガンティノは眼が見えないため、誰かまでは声を聞くまで判別できない。
だが、一応彼は物腰穏やかな口調で扉を開けた人物に声をかける。
もっとも、そう声をかけた時も、決して警戒は止めなかったのだが。
オル(さて、まさかフロイスではないだろうし、先ほど訪れたロヨラさんとも考えづらい。となると・・・)
だが、彼が頭の中で人物を特定する前に、あまりにも特徴ある声・・・というか音を彼は聞くことになる。
?「ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥン♪ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥン♪」
扉を開けたその男は、鼻歌と共に奇妙な歩き方で部屋の中に入ってくる。
もっともその歩き方まではオルガンティノも見えてはいないが、もう既に鼻歌の一小節目で彼は人物を特定していた。
オル「・・・ヴァリニャーノさん、浅井長政の褒美に行ったのでは?」
ウンザリしたような口調でその名前が呼ばれた時、鼻歌はピタリと止まった。

ヴァリニャーノ(以下ヴァリ):
「『その鼻歌、マイケルジャクソンのスリラーですね』ぐらい言えよ。付き合いがいのない奴だな、お前」
ヴァリニャーノと呼ばれた男は『やれやれだぜ』と言ったポーズを取りながら、口を尖らせる。
だがオルガンティノは至極興味なさそうな、ぶっきらぼうな言葉で返した。
オル「それで結構。そんな事より、浅井長政への褒美はどうしたんですか?」
『この部屋からとっとと出て行け』と暗に示すオルガンティノの言葉を、事も無げにヴァリニャーノはかわす。

28 :Invincible 2/6:2005/06/11(土) 22:56:03
ヴァリ「いや、それがさ。ロヨラに止められちゃったんだよね。アイツ行くってよ、名前忘れたけど。
    で、暇つぶしにどっか行こうと思ってたんだけど、なんか皆いないのよ」
オル「当然です。今は忙しいでしょう」
『僕もね』と言おうとしたところでオルガンティノは留まる。何が忙しいかと問われては答えられない。
少なくともこの男は『考え事をしているから』という理由では引き下がりそうに無い。
こんな男に対し言葉に詰まってしまうのは、己を天才と称するオルガンティノには耐えられない恥だった。
ヴァリ「あー、そうだよな。トラック襲撃から皆忙しそうに動いてるし。みんなやるじゃん、頑張るじゃん。
    まあ俺は時代を超えたスーパーヒーロー『マイケル・ジャクソン』聴けるぐらいヒマなんだけど」
オル「はあ、そうですか」
『誰もお前に期待してないんだよ』という侮蔑をオルガンティノはぐっとこらえる。
オル(いや、こういう手合いには何を言っても無駄なんだ。だって馬鹿なんだから・・・)
そんな心など当然知るはずもなく、ヴァリニャーノは物珍しそうに部屋の中を眺める。
やがて彼は、部屋に備え付けてあるモニターを眺めた。
そのモニターの画面は分割されている。いくつかのエリアか、参加者を同時に移しているのだろう。
四つに区分けされた画面の一つには爆発後のトラックが、一つには誰とも知れない腐乱した死体以外に何も無い山中が。
一つには、生魚を手に持ったまま口にすることを躊躇っている前田利家が。
最後の一つには、草の根をかじっている吉良親貞が映し出されていた。
『草の根かじり泥水すする』を地で行っている親貞を見て、ヴァリニャーノは感嘆の声を上げた。
ヴァリ「やるじゃん」
オルガンティノは無視を決め込む。
ヴァリ「ところでお前、モニターとかその目でわかんのか?」
オル「耳で。わからないところは内線かなにかで作業員に聞きます」
ヴァリ「ふーん。やるじゃん」

ヴァリ「ところでお前、この残り13人の参加者達の中のただ一人の生き残りに賭けるなら、誰に賭けるよ?」

29 :Invincible 3/6:2005/06/11(土) 22:57:44
モニターの中をしばらく興味深そうに眺めていたヴァリニャーノが、唐突に呟いた。
オル「・・・なぜ急にそんな事を?」
ヴァリ「さあ・・・まあ、強いて言うなら偏屈トップクラスのお前の視点は誰なのかっていう興味だな」
オル「偏屈なつもりなんてありませんが」
ヴァリ「いいから答えろよ」
オル「はあ」
答えたいわけではないが、答えたくないわけでもない。
そう考えたオルガンティノは、無意識に両目の傷を手で覆い、静かに答えた。
オル「生き残り、ではなく生き残ってもらいたいというなら・・・吉良親貞・・・ですかね。
   少なくとも僕に会うまでは、彼には死んで頂きたくはない」
ヴァリ「ふーん」
部屋のモニターを眺めながら、ヴァリニャーノは『予想通り』と言ったような顔をする。
ヴァリ「そりゃあお前にとっては大切な目の仇だからな」
オル「目というか・・・自分の仇というか・・・そんなものです」
モニターの中には今だ草の根をかじる吉良親貞が映し出されていた。
ヴァリ「しかしすげえ根性だな、コイツ」
オル「恐ろしいと思いますよ。生を欲するのはこの島では決して珍しくはありませんが
   彼は病に侵されている分、その欲望・・・というか執念が人一倍ずば抜けて強い。
   それだけ人一倍、死というものを身近に感じているのでしょう。
   いうなれば、ナイフで身体を少しずつ削られていってる様なものですからね」
その吉良の事を、オルガンティノは『恐ろしい』とも感じ、また『醜い』『無様だ』とも感じていた。
『己の分を超える大金を賭け、必死で神頼みする人間』を見ている時に生まれる感情、といった感じだろうか。
人間なら誰でも持つ黒い感情がそう思わせたのだろう、とオルガンティノは己を分析した。

30 :Invincible 4/6:2005/06/11(土) 22:58:50
この島に100人が連れだされるより前のことになる。
宣教師達は『余興促進のための協力者』を作り出すために数人の人物に接触した。
顕如や三好長慶ら、朝比奈の言葉を言葉を借りるなら生粋の『天皇の狗』と呼ばれる者達である。
そういった人物と交渉する役目はオルガンティノやヴァリニャーノにも与えられた。
オルガンティノが割り当てられた人物は、『吉良親貞』であった。
病に悩む吉良親貞なら協力するだろう、と誰もが信じて疑わなかった。
だがその予想に反し、帰ってきたオルガンティノは目の刀傷から血の涙を流し恨み言を叫んでいた。
その時何があったのかは誰も知らないし、オルガンティノは今でもその時のことは決して話そうとはしない。
おおかた、吉良親貞の逆鱗に触れたのだろう、というのが全員の一致した見解だった。
だが、『出来て当たり前』を失敗し、視力を無くしたオルガンティノはその時からこの部屋に閉じこもる。
そして彼は不眠不休で恨み言を吐いた。時には激しい怒声もあったし、消え入りそうな声で泣くこともあった。
部屋からの怒声が聞こえるもあったし、壁に何かをぶつけるような鈍音が響く日もあった。
恐怖や侮蔑から、誰もその部屋の扉を開ける事は無かった。
そしてそれが一週間ほど続き誰もが慣れた頃、あくびをしながら部屋の前を通りがかったヴァリニャーノはふと足を止めた。
今日は怒声も罵声も怨声も鈍音も聞こえない。
無音なのはその日が初めてではなかったが、なぜかいつも以上に好奇心と恐怖心を煽られたヴァリニャーノは、勢いよくドアを開けた。
そして開けた瞬間だっただろうか、開ける前だろうか。唐突に穏やかな声がヴァリニャーノを迎えた。

オル『おはようございます。素晴らしい一日の始まりですね』
部屋の中心には、こびりついた己の血で顔から胸元にかけて真っ赤に染められたオルガンティノが笑顔で立っていた。

そしてその後余興が開催された時、吉良親貞は帝側の人間となり、北条高広と組み甘粕景持を間接的に殺害した。

31 :Invincible 5/6:2005/06/11(土) 23:50:15
ヴァリニャーノがモニターを眺めて数分経った時、不意に彼は思いだしたかのようにつぶやいた。
ヴァリ「ミルクティー飲みてぇ」
オル「この部屋には水道しかありません。ミルクティーを飲みたければどこかよそを当たってください」
ヴァリ「そうか・・・まあ、いいか。お前と話してても面白くねーし」
オル「・・・」
もともと互いに友人でもない。不躾なヴァリニャーノと被選民意識が強いオルガンティノ、互いに遠慮など微塵も無い。
ヴァリニャーノはすぐにドアの方に歩を向けるが、彼はまた不意に思いだしたかのようにつぶやき、オルガンティノの方に向きかえる。
ヴァリ「あ、そういやそうだ。一つ聞きたいことがあるんだけどよ」
オル「なんですか?」
ヴァリ「単刀直入に聞くぜ。お前、吉良親貞が『島に来る前に』何かしたろ?
    じゃなきゃあ。宣教師の目を斬っちまうような人間がその言いなりになるなんて考えられないからな
オル「いいえ。吉良親貞には何もしていませんよ。彼自身には」
ヴァリ「だがあのガキの人格っつーか『本来持っている何か』を変えちまうような事はした・・・そうだな?」
オル「はい」
ヴァリ「だろーな」
オル「いけない、と?」
ヴァリ「いや、ロヨラやザビ公がどう言うかはともかく、オレ様的には別にどーだっていいさ。
    ただ、人様の人生を思い通りに変えちまうような八百長をした野郎は
    どーなっても文句が言えねえ事を覚悟しとけよ」
オル「つまり?」
ヴァリ「自分で撒いた火種は自分で刈り取れって事だ。
    あんなガキなんぞオレ様は三秒ありゃ十分だが、オレ様はてめえを助けねえ。
    人様の人生変えたなら、てめえの力で刈り取っとけ。そういう事だ」
オル「今さら何を・・・もとよりそのつもりです。そのために僕は彼を待っている」
その言葉を背中で受けながら、ヴァリニャーノはかすかに鉄の匂いがする薄暗い部屋を出て行った。

32 :Invincible 6/6:2005/06/11(土) 23:51:46
ヴァリ「人様の人生変えちまう八百長野郎は、どうなっても文句が言えねえ」
部屋から出て廊下をしばらく歩いた後、彼は己の言葉を再確認するようにふと呟いた。
思い返せばなんと皮肉な言葉だろう。
この殺し合いが開催されなければ、散っていった戦国武将達も元の世界での生き様や死に様を見つけていたことだろう。
人様の人生を変えているのは紛れも無い自分達なのだ。
ヴァリ「やるじゃん」
彼はなんとなく通路の電灯を見て、己の口癖を呟いた。
ヴァリ「あと13人か・・・ちょいと『BAD』な数字だな。さて、不幸なのは日本人どもか、それともオレ様達か」
通路の途中で立ち止まり、右手の人差し指をこめかみにあてながらそう呟くと、ヴァリニャーノは目をつぶり考え出す。
ヴァリ「ま、そろそろ日本人どももこの場所に気づく頃かも知れねえな。
    やっぱり『誰だって鬱陶しいものは根元から絶とうとする』しな」
彼は耳にイヤホンを当て、何かのボタンを押す。
ヴァリ「やっぱり、お小言は聞かなくてもこれだけは聴かねえとな」
マイケルジャクソンの『BAD』を聴き軽快なステップを踏みながら、彼はまた建物のどこかへ歩いていった。

【残り13+1人】

33 :苦渋の決断:2005/06/18(土) 01:54:05
爆音の轟く方角を、フロイスは森の中にそびえる一際高い樹に登って確かめている。
辛うじて体重を支えていられそうな太さの枝に立ち、片手で幹に掴まると、空いた手を眉の上にかざすといった格好で煙の流れる遠方に目を凝らす。
樹の上は高く、時折強い風が吹いて足元を揺らしていく。だがフロイスはその不安定な足場でぐらつく事も無く、ひどく安定した状態でしばらく様子を見やっていた。
そのうちに幹に掴まっていた手を離すと、身軽に飛んで下で待つ信長の脇に降り立った。
信長は腕組みをして、目を瞑ったまま樹に身体を凭れ掛けている。フロイスが上から飛び降りてくると、静かに目を開けて顔をそちらに向けた。
「駄目ですね。この森の中じゃ他の樹が邪魔をして、遠くまでよく見渡せません」
「・・・・・・」
爆音の正体が気にならないのか、はたまた既に本部に居る帝の方に気が行ってしまっているのか、信長は興味の無さそうに頷いただけだった。
反対にフロイスの方は何が起こったのか図りかねている様子で、少しそわそわとして落ち着きが無くなっている。
そのフロイスが、信長の態度に少しムッとしたように、
「気にならないんですか?また人が死んだかもしれないんですよ」
と言って、信長を非難するような目で見た。
「俺には関係ない」
それに対し、信長はフロイスに非難されても意に介する様子は見せず、ただ一言だけ冷たく言い放った。
フロイスにはその信長の無責任な態度が許せなかったが、ここで言い争うことの無意味さを感じて、敢えてそれ以上の苦情がましいことは言わなかった。
だが当然腹の中では良くは思っておらず、信長を罵りたい気持ちと、今すぐにでも爆発現場に駆けつけたい思いで一杯だった。
「パードレ、貴様つまらんことを考えて目的を違えるなよ。貴様は余計な事をせず、さっさと本部とやらに俺を連れて行けばいいのだ」
信長はそんなフロイスの心中を見越してか、しっかりと釘を刺した。

34 :苦渋の決断:2005/06/18(土) 01:56:44
フロイスは歯噛みをして駆け出したくなる衝動を抑えていたが、やがて、
「・・・判った、そうしよう。帝やロヨラ達を止めることが先決でしたね」
と、意を決したように言った。
帝やロヨラ達を止める事が、延いては無駄な人死を出させない早道だと悟ったのだった。
「そうとなれば急ごう、信長さん。ボクらは一刻も早く彼らを止めなくてはならない」
そう言うと、フロイスは信長に自分の荷物を持つように指示し、自身は先に立って道案内を買って出る。
そしてそのままほとんど走り出すようにして樹林を抜けて行った。森の中にも関わらず、その速さは平地を走るのとなんら変わりは無かった。
信長はそのフロイスの後ろを何の問題も無く、平然として付いて行く。
森は一層深くなり、既に燃えたトラックから上がる黒煙は見えない。


【27番 織田信長 『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』】
&【∞番 ルイス・フロイス 『ベレッタM92FC(残弾15+1)』】両者3-E森から4-Eへ 目的:本部への潜入

【残り13+1人】

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